2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて様々な分野で投資が行われ、付随効果も含めて3兆円とも30兆円とも経済効果があると言われています。
あくまでも予測ですが、その影響については1964年の開催時と比較すると改めて見えてくるものがあります。
今回は、1964年と2020年の東京オリンピックの経済効果と影響について比較してご紹介します。
東京オリンピック1964と2020 経済効果比較
1964年と2020年の東京オリンピックの経済効果を比較する時に知っておいた方が良いのは当時の社会的背景と経済環境です。
[1964年の社会的背景と経済環境]
・第二次世界大戦の敗戦から19年後
・高度経済成長期(1954年~73年)期間中
・GNP(国民総生産)は年平均10%以上
・太平洋ベルトに代表される政府主導の工業地帯の造成
・固定相場制、1ドル360円 ※輸出に有利な環境
戦争によって荒廃や混乱した日本でしたが、戦前から続く基礎教育の高い水準、官民一体となって発達した技術力、良質で安い労働力があり、かつ1950年から53年の朝鮮戦争による特需もあって、オリンピック直前は経済が飛躍的に上昇していた時期です。そこへ更なる起爆剤となったのが1964年の東京オリンピック開催でした。
1964年の東京オリンピックは大会運営費や競技施設の整備費、インフラ整備など総事業費が1兆円を越えたことから「1兆円オリンピック」とも言われました。
当時の国家予算が約3兆3,405億円、2017年度の国家予算は97兆4,500円ですから、現在に換算すると約30兆円超にもなります。
勿論、この事業費は複数年にわたるものを合算したものです。
2020年東京オリンピックの当初の予算は約7,000億円でした。しかし、2016年末では1兆8,000億円に膨らみ更に増える可能性も出ていますが、それでも国家予算の割合からすると1964年の比ではありません。
前回大会の内訳は、国立競技場や日本武道館などの競技場建設や大会運営費など実際にオリンピックに関わるものが317億円、残り97%の殆どがインフラ整備でした。
中でも巨額の投資となったのが
・首都高速道路の整備(722億円)
・東海道新幹線の開通(3,799億円)
・地下鉄の整備(2,328億円)
この3つです。これ以外には道路や街路整備などでも1,000億円以上かけています。
21世紀になった現在でも利用されている交通の基盤は、1964年の東京オリンピックで作られたものでした。まさにオリンピック後にも日本人の生活、経済に影響を与えた遺産ですね。
これらのインフラはオリンピックが開催されなかったとしても建設はされていたでしょうが、その場合はもっと年月をかけていた可能性があります。オリンピックがあったからこそ、限られた年数で巨額の公共事業を行うことが可能となり、高度成長を促進するものとなりました。
また、インフラ整備に限らず、全国的に白黒テレビからカラーテレビに買い替える家庭が増えたのもこの頃です。東京オリンピックをカラーで見たい!という世帯が多かったことを示すもので、消費面からの経済効果と言えます。
このように目に見えて街や交通システムが変わった、物質的に豊かになったと実感できたのが1964年時のオリンピックです。当時は“大量生産・大量消費”の時代でした。人々はオリンピックによる好景気を実感しやすかったでしょう。
では、2020年のオリンピックはどうでしょうか?
予算の額では当時を上回っていますが、経済環境は異なります。現在の日本は成長期ではありませんし、デフレからの本格的な脱却の途中です。しかし、景気は緩やかな回復基調にあり、2017年3月の大卒の就職内定率も過去最高85%を記録しました。
インフラ整備については前回ほど大規模な計画はありません。
一時期、リニア新幹線の開業を2020年の東京オリンピックに合わせて前倒しする構想もあったようですが、技術力・安全面などから撤回されています。(リニア開業は2027年予定)
国立競技場の建て直しや一部競技場の新設も行われますが、基本的にはコンパクトなオリンピックを目指しているため既存の競技施設などを使うため前回ほどの投資はありません。
オリンピックの経済効果はインフラや公共事業だけでなく、観光業や宿泊関連、または新しいシステムやサービスなどの面もあるので効果はあるでしょう。
しかし、インフラも整い物質的にも豊かになった今回は、前回ほど景気を底上げするほどの影響や目に見えての実感は難しいと思われます。
1964年東京オリンピックの良い影響と悪い影響
上記の通り、1964年オリンピック開催時は大量生産・大量消費の時代でした。
首都高・東海道新幹線の開通によりオリンピック後も経済は長い間支えられましたが、短期間で建設しなくてはいけなかった為に景観などを考えずに計画を進めてしまったことは悪い影響とも言えます。
その代表的な例とも言えるのが首都高です。土地買収が間に合わなかった為、河川や一般道路の上を中心に建設した結果、江戸時代から続く日本橋の上に高架を建設せざるを得ませんでした。これは歴史的景観を損なっていると現在でも問題になっています。
また、インフラが一通り完成しカラーテレビの普及が一段落した頃、急成長の反動とも言えるように日本経済は構造的な問題を抱えるようになりました。
2020年の東京オリンピックでは高い経済効果が望まれますが、それだけでなく、その後の経済上昇や生活向上に繋がっていくものであって欲しいですね。
まとめ
前回の東京オリンピックは高度経済成長の起爆剤の1つとなり、現代生活の基盤となるものが出来たものでもありました。
1964年と現在では経済環境は大きく異なり、目に見えての変化や実感はそれほどないかも知れません。しかし、2020年の東京オリンピックも経済効果はありますし、開催後に私たちの生活に影響を与えるものもあるでしょう。楽しみですね!
以上、「東京オリンピック1964と2020比較シリーズ 大会による経済効果や影響」でした。
Yoshida
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